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東京高等裁判所 昭和52年(行コ)70号 判決 1978年10月11日

控訴人 金燦圭

被控訴人 東京入国管理事務所主任審査官 ほか一名

訴訟代理人 藤村啓 宮門繁之 ほか三名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、「原判決を取り消す。被控訴人東京入国管理事務所主任審査官が昭和四八年一一月二二日付で控訴人に対してした退去強制令書の発付処分を取り消す。被控訴人法務大臣が昭和四八年一〇月三〇日付で控訴人に対してした控訴人の出入国管理令第四九条第一項の規定に基づく異議の申出は理由がない旨の裁決を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人らは主文第一項同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張および証拠の関係は、控訴人が、当審において、「控訴人は、いわゆる「離散家族」に該当するから、日本国政府は、控訴人とその父金炯益と生活を共にしうるようにする責任があるところ、父金炯益は、「朝鮮民主主義人民共和国」を祖国として仰いでいる以上、控訴人は、合法的に韓国から日本に入国する可能性はないのである。本件裁決は、このような事情をしんしやくしなかつたのは、違法である。」と述べたほかは、原判決の事実摘示どおりであるから、これをここに引用する。

理由

当裁判所は、控訴人の本訴請求は、失当として、棄却すべきであると判断するが、その理由は、次に付加するほかは原判決の説示するとおりであるから、これをここに引用する。

「控訴人は、控訴人がいわゆる「離散家族」に該当する旨主張するけれども、当判決の引用する原判決理由二3(二)において認定した事実に徴すれば、控訴人がいわゆる「離散家族」に該当するものとは認められなく、本件裁決に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があつたものとは認められない。」

よつて、本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担については、民事訴訟法八九条、九五条を適用し、主文のとおり、判決する。

(裁判官 安藤覚 森綱郎 奈良次郎)

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